タイル施工:段差(リッページ)を防いでタイルを水平に保つ方法
タイルの段差(リッページ)とは、目地で接する2枚のタイル端の高さの差のことです。私がいちばん恐れるのがこの手直しです。お客様が気づいたころにはタイル用接着剤が固まっていて、簡単には直せません。ANSI A137.1では、厚みのばらつきが1/16インチ以内のタイルなら段差は最大1/32インチ(0.8mm)まで、裏面にも接着剤を塗る(バックバター)必要があるタイルなら1/16インチ(1.6mm)までと決めています。この範囲に収めるコツは3つだけです。作業前に下地を平らにする。正しい櫛目の幅を選ぶ。そして1枚敷くたびに水平を確認する、行がそろってからではなく1枚ずつです。
- ANSI A137.1は段差を、標準タイルで1/32インチ、バックバターするタイルで1/16インチまでに制限しています。
- ANSI A108.02は下地の平坦性を、標準タイルで3mにつき3mm以内、大判タイル(1辺15インチ以上)で3mにつき1.5mm以内としています。
- タイル用レベリングクリップは、反ったタイルの表面を隣のタイルにそろえるためのものです。傾いた床には効きません。
- TCNAハンドブックは、どのタイルの下も接着剤が最低80%(水回りは95%)行き渡ることを求めています。
- タイル用接着剤の表面が乾き始めるまで、タイルを動かせる時間はおよそ2分です。
タイルの段差とは何か、なぜ起きるのか
段差とは、目地で接する2枚のタイルの高さの差です。私がいちばんよく苦情を受けるのがこれで、この業界の保証トラブルの大半もここが原因です。1/16インチほどの小さな段でも光が当たると影ができ、つま先が引っかかります。仕上がった床を手のひらでなでると、目で見るより先に指で段差が分かります。
原因ははっきりしています。いちばん大きいのは下地の凹凸です。タイルを敷く前に床が平らでなければ、後からどれだけ腕があっても取り返しがつきません。次に多いのが、接着剤が薄くて隙間の上でタイルがたわむこと、大判の磁器タイルにもともとある表面の反り、タイルを接着層にしっかり押し込んでいないこと、そして大判タイルを叩き締める前に急いで先へ進むことです。
反ったタイルはやっかいです。大判の磁器タイルは、表面に1/16〜1/8インチほどの反りがあることがよくあり、これはメーカーの許容範囲内です。この反りが目地ごとに段差となって現れます。タイル用レベリングクリップがあるのはこのためです。クリップの役目は、隣り合うタイルの面をそろえて固定することです。傾いた床そのものはどうにもできません。
ANSI規格は実際に何を求めているのか
タイル工事をまっすぐ扱う規格が2つあります。ANSI A137.1はタイルそのものを扱い、許される反りの量や、先に挙げた段差の限度を決めています。ANSI A108.02は施工を扱い、タイルを1枚敷く前に下地がどれだけ平らでなければならないかを決めています。この2つが、米国のタイル工事が照らし合わされる基準になっています。
| 規格 | 項目 | 値 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ANSI A137.1 | 最大段差(標準タイル) | 1/32インチ(0.8mm) | 厚みのばらつき1/16インチ以内のタイル |
| ANSI A137.1 | 最大段差(バックバターが必要) | 1/16インチ(1.6mm) | バックバターが必要なタイル |
| ANSI A108.02 | 下地の平坦性 — 標準タイル | 3mにつき3mm | 勾配で約1.0mm/m相当 |
| ANSI A108.02 | 下地の平坦性 — 大判(15インチ以上) | 3mにつき1.5mm | 約0.5mm/m — 2倍厳しい |
| TCNAハンドブック | 接着剤の最低カバー率 | 乾燥部80%/水回り95% | タイル1枚ごと、はがして確認 |
| ADA規格 | 段差の最大許容量 | 見切り部で1/4インチ | 床の見切りや敷居に適用 |
ざっくり言えば、スマホの勾配チェックで下地が1.0mm/mを超えていたら、タイルを1枚も敷かないうちに標準タイル向けのANSI A108.02から外れています。大判タイルだと基準は0.5mm/mまで下がります。平らに見える床のほとんどは、何か所かでこの基準を割ります。
ステップ1:下地を確認して整える
ANSI A108.02は、標準タイルなら任意の3mの範囲で3mm以内、1辺が15インチ以上の大判タイルなら3mで1.5mm以内の平坦さを求めています。かなり厳しい数字です。住宅の下地はたいてい、タイルに入る前に何らかの手直しが要ります。どこに問題が隠れているかを知る唯一の方法は、グリッドを切って1点ずつ測ることです。
スマホのブラウザでspiritlevel.proを開きます。単位チップをタップして勾配単位をmm/mに切り替えます。タイル用プリセット(±0.2°)を選びます。あとは、施工範囲全体に2フィート間隔のグリッドを切って歩きます。各交点にスマホを平らに置き、2秒ほど待って値を落ち着かせます。読んだ場所の床にmm/mの数字をチョークで書き込みます。標準タイルの範囲で1.0mm/mを超える所、大判の範囲で0.5mm/mを超える所は、先へ進む前に直します。
何か所も基準を外れることに、みんな驚きます。見た目も踏んだ感じも平らな床が、壁ぎわや出入り口のあたりで2〜4mm/mを出したりします。そこはまさに、端のタイルが光を受けて段差を見せる場所です。タイルが届く前にそういう場所を見つけておけば、あとから削って流し直す何日分もの手間が省けます。
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mm/mモードでグリッドを歩く。
床全体に2フィート角のグリッドをチョークで引きます。各交点で測ります。標準タイルなら1.0mm/m、大判なら0.5mm/mを超えた所を赤で囲みます。
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高い所と低い所を見つける。
部屋でいちばん高い値が基準です。低い所はすべて、3mの範囲でその基準の3mm以内まで持ち上げます。コンクリートのスラブは材料を盛る方が楽で、削るのは骨が折れます。高い所を基準に段取りしましょう。
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下地を整える。
コンクリートの高い所はダイヤモンドカップで削ります。浮いた合板は6インチ間隔でビス留めして固定します。木部は流す前にプライマーを塗ります。
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セルフレベリング材を流す。
深さ1.5インチ程度までの窪みは1回で流せます。それより深い所は数回に分けます。再測定の前に完全に固まるまで待ちます。歩けるまで数時間、タイルに入るまで丸1日みておきます。
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固まったら測り直す。
もう一度mm/mモードでグリッドを歩きます。直した所はどこも公差内に収まっているはずです。読んだ値は写真といっしょにジャーナルに残します。これが施工前の基準記録になります。
spiritlevel.proはスマホのブラウザで動きます。ダウンロードは不要です。タイル用プリセット(±0.2°)を選び、mm/mに切り替えて、材料を頼む前に悪い所をぜんぶ地図にしておきましょう。ジャーナルは各測定を写真つきで残します。
spiritlevel.proを開くタイル用接着剤と櫛目の幅はどう選ぶか
TCNAハンドブックは、乾燥した場所ならどのタイルの下も接着剤が最低80%、水回りやシャワー、屋外なら95%行き渡ることを求めています。櫛目ゴテの目の幅が、タイルの裏にどれだけ接着剤が付くかを決めます。タイルに対して目が小さすぎると接着剤が足りず、タイルが隙間の上でたわみ、あとから段差が出ます。
考え方は単純です。目の幅をタイルの大きさに合わせます。8インチまでの小さいタイルは3/16インチのV目か1/4インチの角目。8〜15インチの中くらいのタイルは1/4×3/8インチの角目。1辺が15インチを超える大判タイルは1/2インチ角目以上が必要で、しかもバックバターが要ります。ANSI A137.1がこのサイズで求めているからです。バックバターとは、タイルの裏に接着剤を薄く塗って、全面がしっかり密着するようにすることです。
大判では接着剤の種類も効いてきます。ふつうのタイル用接着剤は固まるときに縮み、支えのない大きな面を引っ張ることがあります。ミディアムベッド用の接着剤(だいたい3/4インチ厚まで使えるもの)は大判向けに作られています。だれずに支え、同じようには縮みません。混ぜる前に、袋の表示で対応する最大タイルサイズを確認してください。
タイル用レベリングシステムは本当に効くのか
タイル用レベリングシステムは、Tクリップでも、Raimondi、Spin Doctor、その他どれでも、本来の仕事はちゃんとこなします。その仕事とは、接着剤が固まるあいだ、反ったタイルの面を隣のタイルにそろえて押さえておくことです。数ミリの反りがあるタイルなら、段差をほぼゼロまで追い込めます。できないのは、傾いた床を直すことです。
使い方はこうです。タイルを敷く前に土台のクリップをタイルの下に差し込み、タイルを置いてから、くさびやキャップをクリップにかぶせて押し込みます。これで接着剤が固まるあいだ、タイルが隣に対して横や上下にずれるのを止めます。翌日、飛び出た部分をゴムハンマーで叩き落とします。タブはタイル面できれいに折れるようにできています。
クリップの説明書が書かないコツがひとつあります。隣のタイルが別ロットの箱から出したものなら、目地から2インチ以内にはクリップを置かないことです。大判の磁器タイルは、生産ロットが違うと厚みが0.5〜1mmずれることがあり、これはどのクリップでも埋められません。同じ面で箱を混ぜる前に、ロット番号を確かめてください。
タイルを敷きながら水平をどう確認するか
行がそろってからではなく、1枚敷くたびに水平を確認する。これが、きれいな床と手直しの分かれ目です。ふつうの条件なら、接着剤の表面が乾いてタイルを動かすと密着が崩れ始めるまで、およそ2分あります。この時間を使いましょう。タイルを置き、叩き締め、確認する。ずれていたら、その場で直します。
spiritlevel.proでタイル用プリセット(±0.2°)を選びます。サーフェスモードはピッチとロールを同時に読むので、下地の複数の窪みにまたがる大判タイルにちょうど向いています。敷いてから30秒以内にスマホをタイルに置きます。水平に近づくほど音が速く鳴るので、両手をタイルに添えたまま耳で追えます。
小さく区切って進めます。暑い日は、確認する前に9〜12平方フィート以上敷かないこと。接着剤も小分けに練ります。暑い日に20分放っておいたバケツは、見た目は平気でも硬くなり始めます。捨てる接着剤は安いものです。固まって段差の出たタイルをはがす方が、はるかに高くつきます。
見切り部の段差はどうするか
床材が2種類ぶつかる見切り部では、段差は別の問題になります。ADA(アクセシブルデザイン規格)は、床の見切りでの段差を最大1/4インチ(6.4mm)までとし、1/4〜1/2インチの差は1:2より急でない勾配で面取りするよう求めています。1/4インチを超える段差は、人通りの多い場所や公共の場ではつまずきのもとになります。
タイルと無垢フローリング、タイルとカーペットの取り合いがよく問題になるのは、面の高さが違うからです。1/4インチの接着層に載せた3/8インチの磁器タイルは、合板の上の3/4インチの無垢材とは高さがそろいません。その差を埋める見切り材を選びます。Schluter Reno-T、リデューサー、Tモールは、それぞれ違う高さの組み合わせに対応します。金物を頼む前に、両側の仕上がり面の高さを測っておきましょう。
下地の高さが違う部屋どうしのタイルの取り合い(古い家の増築部でよくあります)では、何かを敷く前に接着層の厚みを調整して高さを合わせます。接着層を3mm盛るのは簡単です。固まった床を削るのは簡単ではありません。
壁タイルを垂直・水平に保つには
壁タイルには、床にはない縦方向の積み上げがあります。1段目で1mmずれて始めると、10段目には10mmずれ、カウンターの縁や横の線に対してはっきり目立ちます。だから、基準として水平の墨をチョークで打ち、水平器で確認し、床やカウンターが十分に水平だと当てにしないことです。
大きな見せ場の壁では、ピラミッド法がよく効きます。中心を出し、スマホをプラムモードにして垂直の墨を下ろし、そこから左右に広げていきます。両端の切りものが均等になり、割付けも左右対称に収まります。3〜4段ごとに垂直を確認してください。接着剤(マスチック)は食いつく前にタイルが下へずり落ちるからです。
床ではなく水平の墨から始めるのは、かける2分の価値があります。3〜5mm傾いた床の上の壁では、その1本の墨が、まっすぐ見える段とだんだんずれていく段の違いになります。床は平らに見えます。でも、タイルに必要な精度で平らなことは、まずありません。
タイルの段差についてよくある質問
ANSI規格で許される段差の最大値はどのくらいですか?
ANSI A137.1は、厚みのばらつきが1/16インチ以内のタイルで1/32インチ(0.8mm)、バックバターが必要なタイルで1/16インチ(1.6mm)までとしています。この限度はどの目地にも当てはまります。これを超えると欠陥で、つまずきの危険にもなります。ADAは床の見切りでの段差を1/4インチまでに制限しているからです。
タイル用レベリングクリップは傾いた下地を直せますか?
直せません。クリップは反ったタイルの面を隣にそろえるものです。傾いた下地には効きません。ANSI A108.02は、標準タイルで3mにつき3mm、大判で3mにつき1.5mmの平坦さを求めています。床がこれを満たさないなら、どのクリップを使うにしても、タイルを敷く前にセルフレベリング材を流します。
タイルを貼る前に下地の平坦性はどう確認しますか?
spiritlevel.proを開き、mm/mに切り替えて、タイル用プリセット(±0.2°)を選びます。床全体に2フィートのグリッドを切って歩き、各点の値をチョークで書きます。1.0mm/mを超えると標準タイルではANSI A108.02に外れます。0.5mm/mを超えると大判では問題です。読んだ値を写真といっしょにジャーナルに残せば、お客様に見せる施工前の記録になります。
タイル用接着剤に置いたあと、タイルを直せる時間はどのくらいですか?
ふつうの条件、たとえば65〜75°Fで湿度が中くらいなら、およそ2分です。暑くて乾いていれば90秒ということもあります。接着剤の表面が乾くと、タイルを動かすと密着が崩れます。9〜12平方フィートずつ小さく区切って進め、1枚敷くたびに接着剤がまだ柔らかい30秒以内に水平を確認しましょう。
タイル施工の水平チェックリスト
きれいなタイル工事は、いつも同じ順番で進みます。手順を飛ばすと、どの不具合が出るかだいたい見当がつきます。下地づくりから貼り込みまで、やる順に並べます。
- 下地の平坦性を確認: 2フィートごとにmm/mでグリッド測定。標準タイルで1.0mm/m、大判で0.5mm/mを超えた所を直す。値は写真に残す。
- 櫛目ゴテを選ぶ: 目の幅をタイルの大きさに合わせる。大判(15インチ以上)は最低でも1/2インチ角目。
- 大判タイルはバックバター: 1辺15インチ以上ではANSI A137.1が求めている。
- 最初の1枚をはがして確認: 30秒後に持ち上げて密着を見る。TCNA基準で乾燥部は最低80%、水回りは95%。
- 1枚ごとに水平を確認: 置いて、叩き締めて、タイル用プリセットのスマホで2分以内に読む。接着剤が乾く前に直す。
- 反ったタイルにクリップ: 大判や反ったタイルは接着剤が乾く前にレベリングクリップで留める。
- 見切りの段取り: 見切り材を頼む前に両側の仕上がり高さを測る。ADAは段差を1/4インチまでに制限。
- ジャーナルに記録: お客様の記録用に、区画ごとの写真・GPS・角度を残す。